サハラマラソン(サハラ砂漠マラソン / MDS)とは?
モロッコ南部のサハラ砂漠を、7日間・6ステージ・約250kmにわたって走破する、自給自足のステージレース。 公式名称は「Marathon des Sables(マラトン・デ・サーブル/MDS)」。 1986年にフランス人の Patrick Bauer が始め、2026年で40周年を迎えた、世界最過酷と呼ばれるアドベンチャーレース。
40年続く、砂漠の祭り
1986年、アルジェリア出身のフランス人 Patrick Bauer が「砂漠を走り抜ける」という 自分自身の冒険から生まれたレース。最初はたった23人の参加者だった。
今や世界50カ国以上から1500人を超えるランナーが集まる、 ウルトラマラソン界で最も象徴的な大会の一つ。 エリートランナーもいれば、「走ったことない人」もいる。 エントリーにタイム制限はない。覚悟と準備さえあれば、誰でもスタートラインに立てる。
会場はモロッコ南部、ワルザザード(Ouarzazate)からバスで数時間入った砂漠の只中。 毎年コースは変わるが、石ころの乾いた大地、アップダウンの激しいエルグ、 そして真っ白な大砂丘を含む、サハラの多彩な顔を全部見ることになる。
自給自足という美学
参加者は 1週間分の食料・寝袋・装備をすべてザック(リュック)に詰めて 走る。 主催が配給するのは、水(チェックポイントごとにラベル付きで配布)と、 夜のビバーク(キャンプ地)の開放型テントのみ。
テントは基本的に「ベルベル人風」の布張りの屋根で、 1テントに7〜8人が一緒に寝る。砂が舞えば寝袋の中まで砂だらけになる。 夜は一桁台まで冷え込み、昼は50℃に達することもある。
医療チェックは出発前に必須。最低カロリー(1日2000kcal以上)を満たす食料、 寝袋、毒抜きポンプ、笛、反射材、コンパスなど 義務装備リスト があり、 これを満たさないとスタートできない。
6ステージの設計
毎年コースは変わるが、概ね下記のような構成で組まれている。距離は年により前後する。 最大の山場は4日目の「オーバーナイトラン」。これを越えると、景色が一気に変わる。
| Day | 名称 | 距離(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Day 1 | Stage 1 | 約30km | 足慣らし。スタートライン立つだけで号泣する人多数。涼しい朝からスタート。 |
| Day 2 | Stage 2 | 約40km | 距離が伸びる。暑さと長丁場の両方に初めて向き合う日。 |
| Day 3 | Stage 3 | 約35km | 距離は短めでも、アップダウンと砂丘が本格化。足への蓄積が効いてくる。 |
| Day 4-5 | Long Stage オーバーナイトラン | 約80km | 最大の山場。夜を徹して走る・歩く。早朝スタート→翌日までゴール。 |
| Day 6 | Marathon Stage | 42.195km | フルマラソンの距離。Long Stage明けの身体で走る。 |
| Day 7 | Charity Stage | 約10km | ゴール&表彰。国連UNICEF支援のチャリティステージ。全員同時ゴール。 |
▶ Long Stage が全てを変える
4日目のオーバーナイトランは、このレース最大の試練でありクライマックス。 スタートは早朝、夕暮れから夜にかけて大砂丘や広い砂漠を行く。 翌日を休息日としてビバークで過ごし、身体を回復させる人が多い。 リタイアが最も出やすい、勝負のステージ。
知っておくべき、12のこと
参加資格に「速さ」は無い
フルマラソン〇時間以内、などのタイム条件は一切ない。エントリー費を払い、医療書類を提出すれば誰でも出られる。
エントリー費は€3,950
2026年時点。ユーロ相場で1ユーロ180円なら約79万円。円安だと跳ね上がる。
総費用は約100万円
エントリー費+航空券(エコノミーで往復約20万円)+装備+食料+ホテル。最低でも2週間、日本を離れる。
完走率は約90%
実は意外と多くの人が完走している。辞めるかどうかは、ほぼ「心」で決まる。
開催は3月末〜4月
日本では年度末で仕事的にハードな時期。そこを乗り越えて行くのがMDS。
食料は全部自分で持参
1日2000kcal以上 × 7日分。フリーズドライ・モーリヤン・カロリーバーを駆使する。
水はCPごとに配給
チェックポイントで1.5L単位のボトルにラベルを貼られて配給。捨てるとペナルティ。
テントは7〜8人ひと組
国籍も年齢も関係なく同じテント。ここでできる絆が、帰国後も一生続く。
日中は50℃超えることも
13時前後から猛烈に暑くなる。帽子の中に濡らした布を入れるのが最強。
夜は冷え込む
砂漠の夜は一桁℃まで落ちる。寝袋は軽さより保温性を優先したい。
電波は基本通じない
ビバーク地では夜はほぼ圏外。日中は拾うこともあるが、期待しないほうがいい。
40周年=2026年大会
1986年スタート→2026年で40周年。大会会場の横断幕を見ると涙が出る。
エントリーから帰国まで
申込みから帰国までの流れをざっくり把握しておくと、1年がとても計画的に動かせる。
毎年5月頃に公式サイトでエントリー開始。定員に達すると締切なのでスピード勝負。 エントリーと同時に、高額のデポジット(数十万円)が引き落とされる。
ザック、シューズ、寝袋を選び、トレーニングを開始。 「気候ラン」を取り入れる人も。夏の猛暑日は最高のトレーニング日。
長距離・連日走・ザック背負って山登りなど。 医療書類(心電図、診断書)も準備する。
羽田→イスタンブール→マラケッシュ→ワルザザード。移動だけで2日。 ワルザザードで一泊、翌朝バスで砂漠のビバークへ。
Day 0(メディカル/ゼッケン受取)→ Day 1〜6 レース → Day 7 チャリティステージ。
ゴール後はワルザザード→マラケッシュ経由で帰国。 最終日の羽田着は夜19時過ぎ。留守にする期間は丸々2週間。