一緒にサハラへ行く 先輩の知恵
岩場を登るランナー
08 · Inside tips

リタイア後のリアル、
そして現場Tips。

完走記は世の中にたくさんある。でもリタイアした人の風景は、ほとんど書かれていない。 完走率90%。逆に言えば、10%の人だけが見る景色がある。 それと、現場で効いた細かすぎるTipsを全部置いていく。

The decision

リタイアは「心」で決まる。

スタッフに伝えれば、リタイアはいつでも可能。「どこか痛い?大丈夫?」と何度も心配してくれるが、 多くの場合、実は身体はまだ動く。辞めるのは心だ。

「グロッキーです」と言ってしまえば、スタッフは無理に止めない。 心の問題ですなんて説明する必要もない。後は、最後のランナーが通るまでその場で待つだけ。 これが長いのなんの。

完走率は90%。この感情を味わえるのは、 辞めた人の、特権だ。
DNF flow

リタイア後の一日、何が起こるか

CP / スタッフに申告
「もうやめます」

スタッフに申告。水をもらう。CPで最後のランナーが通るまで待機。 スタッフがビバークに戻る車に乗せてもらう。

その夜
誰もいないテントで最後の晩餐

割り当てられたテントで、同居人がまだゴールしていない時間は一人で過ごす。 夕食を食べ、ゆっくり横になる。経験者の多くが口にするのは「不思議と悲しくはない」という感覚。やり切った後の静けさがある。

翌朝 8:00
署名、そして悪そうなバンへ

水をもらうところに集合。署名書類を渡される。 右上にゼッケン、左に氏名・生年月日、下にリタイアした日付、最後にサイン。 「これ以降、MDSは完治しない」的な書類。

8時集合と言われてるが、実際は8時半に来るやつもいる。時間通りに動かなくていい。

9:00頃
悪そうなバン → ベンツのバス

砂漠を走るパンパンのバン(日本では絶対乗らないレベル)で5分。 そのあとベンツのバスに乗り換えて6時間、ワルザザードへ。 ランチパックの冷えたバナナとマドレーヌが美味い。

午後
ワルザザード到着、コスワンで荷物受取

キャリーバックを受け取る。砂だらけ。 そのままコスワンに泊まるか、別のホテルへ移動するか選択。 日本人参加者が戻ってくる合流ホテルへ移動するのが一般的。

▶ バス座席の最適解

バス1番後ろ窓側は、足元にタイヤの出っ張りがあって6時間ずっと足を上げる羽目になる。 ベストは1人席、または右側(運転席の逆)の窓側。左ハンドルなので日差しは進行方向左側から。 乗るタイミング:最初に乗って最後に降りる、は悪手。最後に乗って最初に降りるのが正解。

Micro tips

誰も書いてない、細かすぎるTips

Tip 01

トイレ事情

周りをテントに囲まれた野原。初日は綺麗だが日数が経つと汚れてくる。 椅子が弱くなってくるので、後半は着地に注意。壊れる可能性あり。

Tip 02

モロッコのトイレの小便器

ワルザザード移動中のトイレ休憩、小便器の高さが異様に高い。 ちょっと背伸びしないと届かない。心の準備を。

Tip 03

夜のテントは砂嵐リスク

テントが潰れることがある。中の荷物は固まるべき場所にまとめ、 寝ながら飛ばされないように。夜は一気に寒くなる。

Tip 04

コンタクト交換は風待ち

砂漠の風の中でコンタクト交換は地獄。風のない時間を待つ。 今年は比較的風のない時間があって助かった。

Tip 05

寝るときの枕元

喉が乾く、唇がカサカサになる。リップと水を枕元に置いて寝る。 これを忘れると朝、唇が裂ける。

Tip 06

AirPodsの翻訳機能

英語・フランス語のアナウンスやフロント対応も、AirPodsのライブ翻訳で どうにかなる。英語が話せなくても、これで乗り切れる。

Tip 07

ランチセットは期待しない

バスでもらえる「ランチセット」はバナナ・みかん・キットカット・クッキー・水2L。 美味しくないので気になる人は自分で用意。

Tip 08

メディカルチェックは緩い

荷物チェックは自己申告、ほぼ何もチェックされない。 心電図はネットに出ているのをコピーして来る人もいる(推奨ではないが)。

Tip 09

落とし物はここに集まる

水をもらうところにはイヤホン等の落とし物が山のように集まる。 自分のが無くなっていたら、ここで探してみる。

Tip 10

歯磨きセットを忘れるな

軽いし小さいのに、忘れると1週間歯磨きなし。 経験者が「最大の失敗」として挙げる代表例。準備リストの1行目に書いておけ。

Tip 11

ローソクとライトを複数

夜のテントの雰囲気がガラっと変わる。現地でローソク調達、 ライトは日本から複数持参。テント内パーティーの必需品。

Tip 12

電波は基本つながらない

ビバークは夜は圏外、日中は拾うこともある。記録はメモアプリで十分。 ネット環境が無くてもその日の気持ちはまとめられる

Mental tips

心が折れそうな時の処方箋

  • 「なぜ行くのか」を紙に書いて、リュックに忍ばせる
  • 家族・仲間からのメッセージをオフラインで読めるようにしておく
  • 3日目の「辞めたい」は、ほぼ全員来る。座って水と飴で抜ける
  • 「完走しなくていい」と決めると、逆にスタートラインに立てる
  • 砂漠には時間がある。同行者の人生を聞くのも最高の時間潰し
  • 一人になったら、心の中で「去年の自分」と会話する
サハラの醍醐味の一つ、それは「時間が溢れている」こと。 その人の人生を、生まれた時から今まで全部聞ける。 なぜサハラに来たのか、聞ける。 — Stage 2、40kmの道中で多くの参加者が実感すること
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